
【事例紹介】中小企業の男性育休への対応を解説 | 育児・介護休業法改正を踏まえた就業規則改定と運用定着のポイント
男性育休への対応は、もはや一部の先進企業だけのテーマではありません。
令和6年度雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率は40.5%まで上昇しました。
一方で、取得期間は約4割が2週間未満にとどまっており、「制度はあるが、十分に活用されているとは言い切れない」状況も見えてきています。
(引用:https://tomoiku.mhlw.go.jp/assets/pdf/activity/document_R6.pdf)
企業に求められているのは、単に制度を置くことではなく、従業員が事情に応じて選択できる環境を整え、現場が無理なく回る仕組みまで設計することです。
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監修者
桜井 吏(さくらい つかさ)
特定社会保険労務士
中小企業診断士
生年月日:1990年(平成2年)生まれ
出身地:山形県米沢市
趣 味:スポーツ全般
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この記事で分かること
・なぜ男性育休対応が経営課題になっているのか
・2025年法改正で何が変わったのか
・就業規則改定だけでは足りない理由
・中小企業で制度を定着させる考え方
・社労士に相談すべき場面
なぜ今、男性育休対応が企業の経営課題になっているのか
結論:男性育休は「福利厚生」ではなく、「人材確保・定着・職場運営」に関わる経営課題のため
男性の育児休業取得率は上昇しており、企業として「対応しなくてもよい」とは言いにくい状況になっています。その一方で、取得期間は短期に偏っており、制度の存在だけでは十分ではないことも見えてきます。ここから分かるのは、制度を作るだけでなく、取得しやすい職場づくりと業務を回す仕組みづくりの両方が必要だということです。
また、育児休業等に関するハラスメント防止措置は事業主の義務です。方針の明確化、相談体制の整備、事実確認と再発防止、プライバシー保護、不利益取扱いの防止などが求められており、上司や現場の何気ない言動も企業として無関係ではありません。
加えて、2025年4月からは育児休業等の取得状況の公表義務の対象が、労働者数1,000人超の企業から300人超の企業へ拡大されました。義務対象でない中小企業であっても、「男性育休にどう向き合っているか」は採用・定着・対外的な信頼に影響しやすい時代です。
(引用:厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533_00006.html)
企業が経営課題として捉えるべき理由
・若手人材の採用・定着に影響しやすい
・取得希望者の増加に備える必要がある
・現場負担や引継ぎの設計が必要になる
・パタハラ・不利益取扱いのリスクがある
・制度未整備が企業イメージに影響しやすい
2025年の育児・介護休業法改正で何が変わったのか
改正ポイント:
・残業免除の対象拡大
・3歳未満向けテレワーク措置の努力義務化
・3歳〜就学前向けの柔軟な働き方措置の義務化
・個別周知・意向確認の実施
・個別の意向聴取と配慮の実施
2025年4月からは、所定外労働の制限、いわゆる残業免除の対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されました。さらに、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講ずることが、事業主の努力義務となっています。
2025年10月からは、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対して、企業が5つの選択肢の中から2つ以上の措置を選んで整備することが義務になります。労働者は、その中から1つを選んで利用できます。選択肢は、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇、短時間勤務制度です。
あわせて、企業には個別の周知・意向確認、妊娠・出産等の申出時や子が3歳になる前の個別の意向聴取と配慮も求められます。勤務時間帯、勤務地、制度利用期間、業務量などについて、労働者の事情に応じて配慮することが制度上明確になりました。
就業規則改定だけでは足りない理由
結論:規程を整えるだけでは制度は動かず、運用フローまで設計して初めて実務対応になります。
就業規則の改定はもちろん必要です。ですが、現場で実際に運用するには、申出の受付方法、上司の対応、業務引継ぎ、不在時のフォロー、復帰時の対応などを具体化しなければなりません。制度が存在していても、「誰に言えばよいか分からない」「上司が困る顔をしそう」「現場が回らなそう」と感じれば、従業員は利用をためらいやすくなります。これは、取得率は上がっても取得期間が短い現状ともつながる論点です。
また、企業には育児休業等に関するハラスメント防止措置が義務付けられています。つまり、管理職が制度を正しく理解していない状態は、それ自体がリスクです。制度説明、相談窓口、社内周知、面談ルール、記録の残し方まで含めて整えておくことが重要です。
就業規則改定だけで終わらせてはいけない理由
・制度があっても申出しづらいと使われない
・管理職の理解不足がトラブルにつながる
・引継ぎルールがないと現場負担が集中する
・面談や意向確認の実施方法を決める必要がある
・ハラスメント防止は運用整備まで含めて必要
【事例】中小企業で男性育休を定着させるには
たとえば建設業の中小企業では、これまで「そもそも取る余地がない」「現場優先で考えたことがない」といった状態も珍しくありません。人手に余裕がなく、有給休暇も十分に使われていない職場では、男性育休も制度だけが存在して終わりやすいからです。

制度があっても使えない理由
・そもそも男性社員が育児休業を取る発想がない
・職場での男性育休の前例がない
・現場優先の会社風土で取りにくい
一方で、現在は状況が変わっています。従業員側では育児参加への意識が高まり、社会全体としても男性育休を後押しする流れが進み、法改正によって企業が整備すべき内容も具体化されました。さらに、両立支援等助成金では、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)により男性育休を後押しする仕組みも用意されています。
中小企業で進めやすい考え方
・まずは短期取得も含めて制度設計する
・繁忙期を避けた取得パターンを想定する
・分割取得や時差出勤との併用も考える
・引継ぎルールを簡素でも明文化する
・管理職の声かけルールを決めておく
こんな会社は社労士に相談した方がよい
法改正の理解より「自社でどう運用するか」に迷っている会社ほど、社労士への相談効果が大きくなります。
2025年改正では、就業規則の見直しだけでなく、対象制度の選定、周知方法、意向確認、意向聴取、管理職対応、ハラスメント防止、場合によっては助成金活用まで整理が必要です。これらを総務担当者や経営者だけで抱えると、制度はできても運用が曖昧になりやすくなります。
お問い合わせはこちらから
特に、次のような会社は早めに相談する価値があります。
・法改正の対応範囲が整理できていない
・どの制度を選ぶべきか判断できない
・就業規則改定と実務運用を一緒に進めたい
・管理職向け説明や社内周知まで対応したい
・パタハラ防止を含めて体制を整えたい
・助成金も含めて無理のない進め方を知りたい
