【社労士が解説】建設業で社会保険加入が進まない理由と従業員合意をつくる3ステップ
社会保険加入を進めたいのに、従業員の合意が得られない。
建設業では特に多いテーマです。
従業員の方々が社会保険加入を拒否する理由の中心は「手取りが減る」という不安です。
また、昔ながらの建築系の商習慣や、雇用と請負の境界があいまいな働き方、現場優先で説明の時間が取りづらい状況など、複数の要因が重なりやすいのが実情です。
元請会社からの作業員の社会保険加入条件なども厳しくなる中で、多くの建設業・建築業の方々が頭を悩ませていると思います。
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監修者
桜井 吏(さくらい つかさ)
特定社会保険労務士
中小企業診断士
生年月日:1990年(平成2年)生まれ
出身地:山形県米沢市
趣 味:スポーツ全般
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当事務所では、これまで50社以上の建設業・建築業のお客様を社会労務士事務所(弊社ホームページはこちら)として支援してきました。同じ壁を何度も見てきた実感として、ポイントは「正論で押す」ことではなく、従業員が腹落ちする形で合意形成を設計することです。
こちらの記事では、建設業で社会保険加入が進まない理由から、従業員合意をつくる3ステップについて分かりやすく解説いたします。
前提整理:加入は【選択】ではなく【義務】となる場合もある
まず前提として、社会保険加入は「会社が入りたいかどうか」「従業員が嫌がるかどうか」とは別に、制度上、加入が求められるケースがあります。
例えば、法人の事業所は原則として健康保険・厚生年金の適用対象となる扱いです。
また、個人事業所でも一定の条件に該当する場合は、強制適用となります。
そのため、「合意がないから加入できない」という発想よりも、「合意をつくりながら、適法で安全な整備を進める」という考え方が現実的です。
従業員が「手取りが減る」と感じてしまう理由とは
反対の理由はシンプルで、「給与明細の控除額(天引き)が増える」ことへの抵抗感です。短期的な手取り減少だけが強調されると、合意は取りづらくなります。
よくある誤解・すれ違いのパターンは次の通りです。
・自分で国民健康保険料や国民年金保険料を納めているので大丈夫だと思っている
・「健康保険・厚生年金=損」という断片情報が一人歩きしている
・一人親方・常用・日雇いが混在し、制度理解が分断されやすい
さらに建設業特有の背景として、次のような事情があります。
・現場優先で、制度説明の時間が取りづらい
・「会社に縛られたくない」という心理が強い
・同業他社の慣行に引っ張られる空気感
経営リスク:建設業は外部チェックが入りやすい構造
建設業では、社会保険の加入状況が外部から確認されやすい構造があります。元請からの要請、採用面での不利、対外的な信用の観点など、未加入の状態が経営上の足かせになることがあります。
「いつか問題になる」ではなく、「ある日突然、外から来る」タイプの課題になりやすいのが建設業の特徴です。そのため、社会保険加入は「労務の話」であると同時に、「経営の守り」でもあります。
合意形成を前に進めるための3ステップ
ステップ1:雇用実態の棚卸し
社会保険への加入対象者の把握のために、最初にやるべきことは事実の整理です。具体的には下記のような事実整理を行います。
・従業員区分の整理(正社員・日給月給・短時間・季節雇用など)
・一人親方・請負との線引き確認
・労働条件の確認
「誰が対象になっているか」を見える化すると、合意形成の土台ができます。
ステップ2:加入メリットの丁寧な説明(社内説明会)
次に必要なのは、加入メリットの丁寧な説明です。社長の言葉だけでは伝わりにくい場面で、第三者である社労士の説明が効くことがあります。
説明会で扱うべきテーマ例は次の通りです。
・手取りが減る理由の構造(控除の意味、会社負担の存在)
・病気・ケガ・出産などの局面での安心材料
・年金制度の理解(老後だけではなく障害等に対しての保障もある)
・会社側の狙い(採用、元請対応、事業継続、処遇設計)
・質疑応答の確保と個別不安の吸い上げ
目的は「納得の総量」を増やすことです。反対の温度を下げることにつながります。
ステップ3:手取り影響の見える化と税理士連携
最後に必要なのは、数字での腹落ちです。感情論の長期戦を終わらせる材料になります。
実施することは次の2つです。
- 手取り影響シミュレーション(人別・家族構成別の見える化)
- 税理士連携による「手取りを減らしにくくする打ち手」の検討
具体的な検討例は次の通りです。
・給与設計・各種手当の設計見直し
・年間の支給バランス見直し
・経費・福利厚生・制度活用の整理
・法定福利費の捉え方整理(原価・見積への反映方針)
ここで大事なのは、「必ず手取りが減りません」と約束することではありません。影響を最小化する選択肢を「適法性と実務運用と会社体力の範囲で探る」という位置づけになります。
例外論点:建設国保を継続したい場合の整理
建設業では、健康保険について「建設国保(国民健康保険組合)」に加入している・継続したいというニーズが多いです。ただし、この論点は制度上の条件や手続き、扱いの組み合わせによって結論が変わることがあり、ネット情報だけで判断すると危険なケースがあります。
会社の形態、加入状況、対象者の属性によって整理が変わるため、個別に状況を確認しながら進めることをおすすめします。
よくある個別相談テーマ
現場で実際に多い相談テーマは次の通りです。
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社会保険の加入対象者の範囲整理
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加入タイミングと遡及の整理
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協会けんぽと建設国保の違い
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給与計算・控除設計・説明資料整備
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元請からの加入要請への対応方針整理
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許可更新などを見据えた整備ロードマップ作成
「一回で片付く相談」より、「整理しながら進める相談」になりやすい領域ですので、もしご不明点や不安な点がある場合は、専門家へのご相談をお勧めいたします。
まとめ:無料お問い合わせはこちら
「社会保険に入りたいのに、従業員が反対して進まない」段階こそ、早めの相談が効果的です。
下記の4つの情報がございますと、初回ヒアリングが短縮できますので、お問い合わせの際は事前にお伝えいただけますと幸いです。
初回は無料でお問い合わせ可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
・従業員数
・雇用形態
・現在の加入状況(分かる範囲)
・困っている具体場面

